チームソニックの熱い友情話…?
元ネタは、教科書にも載るぐらい、有名な落語の演目のひとつ。
ある日、ソニックとナックルズは、ミスティックルーインにあるテイルスの工房を訪ねていた。
「そう言えば、ソニックとナックルズって何か怖いモノでもあるの?」
ふとした会話の途中、テイルスが二人に尋ねるように言った。
テイルスにとって二人は、恐れ知らずと言う印象があり、もし、怖いものがあるなら何なのかと言う事が気になり、尋ねてみたのだ。
缶ジュースを口にしていたソニックは、しばらく考えた後に、テイルスの質問に答える。
「そりゃあもう…」
ソニックは一度、そこで言葉を区切ると、声のボリュームを抑えながら、怖いモノを言う。
「エミーしかないだろ。」
もちろん、その空間にエミーはいないのだが、ソニックは恐る恐ると言った口調で二人に話した。
「どこからともなく現れて、逃げ切れない…この俺でもお手上げさ。」
「ハハ…」
ソニックの言葉にテイルスは苦笑いしかできなかった。
それは彼もまたエミーの恐ろしさを知っているからだ。
「僕はやっぱり、雷が苦手だな。雷鳴を聞くと、落ち着いてられないよ。」
続いてテイルスが、自分が怖いと思っているモノを言った。
「ゴロゴロピッシャーン!!」
「うわぁ!」
雷鳴が苦手と言ったテイルスにソニックは、雷の音を大声で真似て、テイルスを驚かせる。
「…ソニック!」
「ハハ、Sorry、テイルス。」
ソニックの行動に『もう!』と言う顔をしていたテイルスは、ため息を一つつくと、ナックルズへと顔を向ける。
「で、ナックルズの怖いモノって何なの?」
「う~ん…俺は特にないな。」
テイルスの言葉にナックルズは、腕を組んだままそう答えた。
真夏の強い日差しは苦手ではあるが、怖いモノでもないし、また昔、苦手としていた女の子とのコミュニケーションも、ソニック達と一緒にいるようになって、気にならなくなっていた。
「ホラ、なんかないの?お化けとかさ。」
「お化けもそんなに怖くなかったしなぁ。」
テイルスは一例として、お化けの存在を上げたが、一度、お化けを倒してしまったナックルズにとって、お化けは恐怖の対象にはなりえない。
「俺だってあるんだから、何かあるだろ?」
ソニックは『さぁさぁ』と急かすようにナックルズに答えを求める。
「う~ん…怖いモノか…」
ナックルズは腕を組んだまま考え込んだ。
「…あっ、俺の怖いモノ、思い出してしまった…」
「何?何?」
ナックルズの言葉にテイルスは興味津々な言葉で聞き返す。
「…ニラ饅頭が怖い。」
「はあ?」
一瞬の沈黙の後に出てきた答えがあまりにも予想外だったので、ソニックは気の入っていない言葉を出してしまった。
「ニラ饅頭って、あのニラ饅頭?」
「あぁ。そのニラ饅頭だ。極東の地を旅していた時に、あまりのおいしさに食べ過ぎて、体を壊しかけた事がある…」
「ハハハハ!ナックルズらしい!」
ナックルズが語った怖いと思った理由に、ソニックは思わず、笑ってしまった。
また、あのナックルズにこんな弱点がある事に対しても笑ってしまったのだろう。
「笑い事じゃねぇ!本当にあの時は死にそうになったんだぞ!」
「…」
ナックルズの物凄い剣幕に、ソニックは笑うのを止めていた。
「あぁ、考えただけで頭が痛くなってきた。テイルス、ちょっとだけベッドを借りるぞ。」
ナックルズはテイルスの返事を聞く前に、テイルスの工房の一番奥にある寝室へと向かって行く。
「まさかあそこまでニラ饅頭が苦手だなんて、意外だったね…」
テイルスは心配した顔で、部屋を出て行ったナックルズを見つめていた。
ソニックも同じように、ナックルズの足取りを見ていたが、テイルスとは違い、心配しているような顔には見えない。
「へぇ~ニラ饅頭ねぇ…」
「…!」
ソニックのその言葉にテイルスは、ソニックの顔を見るが、それは“何かを企んでいる”顔だった。
『何か企んでいる…』と思った直後、ソニックは一言、テイルスに言った。
「ちょっと買い物に行って来る!」
それから数分もしないうちにソニックはテイルスの工房へと帰ってきた。
案の定、その手にはしっかりとニラ饅頭が大量に入った袋を持っており、これから何をするのか、テイルスはすぐに理解した。
こうなったソニックは簡単に止められない。
テイルスは目を瞑り、『ご愁傷様、ナックルズ…』と小さく呟いた。
一方のソニックは意気揚々と寝室へと向かい、ナックルズが横になっているベッドに近づく。
「ナックルズ、一応、差し入れをここにおいておくぜ!」
もちろん、その差し入れとは大量のニラ饅頭が入った袋だ。
『おぉ、ありがとな。』とナックルズの小さな返事を聞いたソニックは、笑いを堪えきれない。
「それ食って元気出せよ…」
『ニシシシ!』とこみ上げてくる笑いを察知されないように、言葉を続けると、足早に寝室から出て行く。
ソニックが寝室から出て行くと、『ガサゴソ』と袋の中を探る音が聞こえ、ソニックは、今か今かとその時を待っていた。
「うぎゃ~!ニラ饅頭だ!怖ぇぇぇ!」
ナックルズの怯える様を脳裏に描いたソニックは、にんまりと満面の笑みを浮かべる。
「怖ぇぇ…もぐ…怖ぇぇ…むしゃ…怖ぇぇ…んぐ…怖ぇぇ…ごくっ…怖ぇぇ…」
『怖い』と言ううねり声の合間に入る妙な音を気にしながらも、ソニックは『大成功!』と小さくガッツポーズを取った。
そんなソニックのイタズラに、テイルスは流石にこのまま見ているわけには行かないと思ったのか、『ソニック、駄目だよー!』とソニックに注意を促す。
「ナックルズ、大丈夫?」
寝室に入ったテイルスは、布団に潜り込んでしまったナックルズに気遣う。
「あっ!」
しかし、布団を取った瞬間、テイルスは目の前で起きていた現実に対し、短く叫んだ。
テイルスの大きな声に、寝室の外でバツの悪そうな顔をしていたソニックも、寝室へと入り込んだが、次の瞬間にはソニックもテイルスと同じように『あっ!』と短く叫んでいた。
その目には、美味しそうにニラ饅頭を頬張っているナックルズが入ってくる。
大量にあったはずのニラ饅頭は既に、跡形もない状況だ。
そして、ソニックは自分がこう言うイタズラをするであろうと言う前提で、『ニラ饅頭が怖い』とナックルズが言った事を理解した。
「No way!!」
ソニックは、ナックルズの勝ち誇った顔を見て、そう叫ぶ。
「Hey!ナックルズ、本当は何が怖いんだ?」
敗北感で悔しい顔をしたソニックにそう言われたナックルズは、悩む事なく答えた。
「今は美味しいお茶が怖いな。」
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